Lembrança(レンブランサ)

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Column(コラム):江藤有希

2004年ブラジル滞在日記…リオ・デ・ジャネイロ篇

これがボヘミア 2月16日(月)
休日。お酒の話でもしましょう。
私は元来、下戸であります。好きじゃない、とかではなく本当に飲めません。親もそうだったのでおそらく遺伝。ビールやワイン、お酒の種類によらず飲むと呼吸が苦しくなるので、よく分解酵素が足りないんですね、と言われます。
ところが。ここブラジルで何度か友人たちとライブハウスに行った折、「まぁちょっと飲んでみなよ」という誘いにのってダメモトでビールを飲んでみたところ、何やら口あたりがよろしい。う〜ん、甘い。
その銘柄は「ボヘミア」。小ぶりな瓶に入ったビール。これを機に体調が良いと思われる時は試してみるようになった。他の「ブラーマ」「アンタルチカ」など多くの人が一番美味しいと挙げる銘柄とは違うけれど、ボヘミアは私のお気に入りとなりました。

2月17日(火)
レッスン。ピシンギーニャを語ると熱弁の止まらないホジェーリオ。今日は先週のニテロイのお宅で出たミナス料理の話から食べ物の話題に。ホジェーリオは生魚が食べられないらしく、前年来日した際、日本料理屋では何も食べられなかったそうです。残念。
さて本当にレッスンが始まると、ブラジルを代表する作曲家の話。アリー・バホーゾ、ドリヴァル・カイミ、ノエル・ホーザの三人を挙げてその特徴を解説してくれる。やがて歌詞つきショーロの話題となると、彼は後から歌詞をつけられた曲が苦手だそうで歌詞を考えながら作られた歌がしっくりくるという。そして即興で弾き語り。「♪淑美はアデミウジの家へ行き、由香はレッスンで忙しい、有希とホジェーリオはレッスンでコパカバーナ〜」とかなんとかなかなか面白い。
といってもいつもこんな風に遊んでばかりいるわけでもなく、しっかりショーロの曲も弾いているわけです。でも言葉の勉強になるので会話も重要。最近教わっているのは「ジーリア」と呼ばれる俗語。どこの国にも存在すると思うけど、やはり色々な表現があって興味深かったです。

2月18日(水)
最近、毎週ライブに出るのに服が足りなくなってきたので買い物に出かける。
時々近所の商店街で買うこともあったけれど、しっかり選びたい時は大型ショッピングセンター「RIO SUL」へ。路線バス一本でいけるので大変便利。この頃にはバス恐怖症もだいぶ払拭される。
広いフロアを一通り見てまわり、気に入った服を購入。クレジットカードで支払いするために漢字で署名したら店員さんにすごい反響。漢字が美しいというのだ。途端に精算作業そっちのけで「私の名前を漢字で書いて!」とすごい勢いで頼まれる。すると店中からわらわらと店員さんが出てきて次から次へと頼まれる。後で他の日本人に見られてあまりイメージの良くない字を使うのもなんだし、なんて思いながらなんとかこなし、そのお店にいた10人近い店員さんの名前を書き出す。結局カードリーダー不具合で(こういうこと結構多かったです)現金で支払いました。意味なし。
でもお店を出るときお礼に、と冷蔵庫からペットボトルのミネラルウォーターを頂きました。ごちそうさまでした。

2月19日(木)
夜に『ダーマ・ダ・ノイチ』。このメンバーでこのお店でのライブは今日が最後だという。
その前に徒歩15分の由香さん宅へ晩ご飯をごちそうになりに伺う。何品もそろった彼女の手料理はとっても美味しくて久々に日本の家庭料理を頂いた感じでした。そしてライブにも一緒に行ってくれることに。由香さんはこちらの先生に師事してレッスンを受けたり、ご自分も生徒さんをもってレッスンしたり、個人練習や演奏活動に向ける準備など常に忙しくされているけれど、面白そうなライブがあるとこうしてつきあってくれるしサンバを踊るのもとっても上手。もちろんポルトガル語も堪能で本当にカリオカ(リオっ子)という感じなのです。
さてお店に着いていつものようにライブ開始。最近買い集めて聴いていたノエル・ホーザ集のおかげで、最初の頃よりもメロディやコード進行に慣れてきた。アジェノールからもらった彼の作品集も随分聴きこみ、他のメンバーとも顔を見合わせながらアンサンブルを楽しむ。そしてライブ後半、フルートのエドゥアルド・ネヴィスがカンジャで参加。皆からエドと呼ばれている彼は、一昨年エポカ・ヂ・オウロと共に来日。フルート、サックス共ものすごいアドリブ能力。そしてこの日はセウシーニョの息子エドゥアルドも参加。二人のエドがカンジャで演奏している間、セウシーニョと私は客席でちびちび飲む。セウシーニョは私の楽器をもって楽しそうに初ヴァイオリン。でも安定させるのが難しいらしく段々ジプシーみたいに肩より下に楽器がきて降参。
途中からホテルの日本人客をつれたマイコも登場し、一緒に踊り始めたあたりで再びステージから呼ばれる。ライブ終演後は記念に写真撮影。楽しいライブでした。
フルートのエドとセウシーニョ。 記念撮影。それにしてもカラフル。 師匠と乾杯!

2月20日(金)
今日は日本の保険会社に電話。海外旅行損害保険に加入して出発したけれど予定より半月延びてしまったので。ところが、私の勘違いで期限をすでに過ぎていたため延長扱いにはならず新規申し込みになってしまった。予定外の出費。トホホ・・
夜、由香さんに誘われコパカバーナ海岸に面したアラビア料理店で食事。ジュニオールやマイコ、他に共通の友達だという新婚カップルも来ていた。
カウンターの上にこんなオブジェ。 実はこの後パゴージ・ジャズ・サルジーニャス・クラブというかっこいいグループのライブがあり、ホジェーリオがゲスト出演するという話だったので皆を誘ってみた。すると由香さんは賛同、ジュニオールは翌日仕事があるため(病院勤務なので)今日は帰るという。ホテル勤務のマイコも同様。
で。。。由香さんと私、女二人で行こうとすると由香さんの彼氏ジュニオールがものすごく心配して止めようとする。タクシーで行くから、と説得してもいい顔をしない。「ラパには色んなヤツがいて、何が起こるかわからない。そんなところに女性二人で行くなんて」と納得してくれない。でもお店まで行けばホジェーリオがいるし私はどうしてもライブを聴きたかった。由香さんも行きたいと言ってくれて結局ジュニオールがしぶしぶ友達のタクシー運転手に電話して、レストランまで迎えに来てもらった。ふー。愛ってすごい。でもそのくらい心配になってしまう環境なのかも。
『ヒオ・セナリウム』に行くとすでにライブは始まっていて、ものすごい盛り上がり。
件のグループはリーダー格でバンドリンやカヴァッコを繰るホドリーゴ・レッサが歌をうたっている。これには少し驚いたが、私の中では前衛系カッコイイバンド代表、サウンドは期待通り。ステージ前のダンススペースで踊りつつボヘミアを一本飲み干す。
終演後はホジェーリオと由香さんと三人でお店をうろうろ廻る。ここのお店のことはホジェーリオも褒めていたけど、本当に美しくてユニーク。 三階建ての吹き抜けで床や階段はギシギシ、かなりのアンティークぶり。三階は昔薬局だったそうで棚に薬瓶を飾りそのままの雰囲気を残している。興味深い調度品の数々、凝ったディスプレイ。とっても雰囲気のあるライブハウスでした。あ、ちゃんと無事に帰宅しましたから。
雰囲気たっぷりの看板。 お店の奥の壁。

2月21日(土)
セウシーニョの助っ人、息子エド。今日から24日までカーニバル。ラパより西に位置するサンボードロモといわれる地域でかの有名な"リオのカーニバル"は行われる。数日前からコパカバーナ近辺も騒がしくなっていた。とにかく人が多くて道路も渋滞。
タクシーに乗るとドライバーに必ず「カーニバルには行くの?行かない方がいいよ〜、危険だから」とさとされる。とにかく人が沢山いてよほどあたりをよく知っている人がいないと危ないという。うーむ。せっかくだから観に行きたい気持ちもあったけれど、コパカバーナでさえこの人ごみ。遠慮することにしました。
午後はレッスン。
夜は『カリオカ・ダ・ジェンマ』でホナウド、ホジェーリオたちが演奏する。歌手はいつものタニア・マシャード。一応楽器を持って行ったけれどカーニバル初日とあっていつにもましてものすごい数のお客さん。テンポの速いサンバで盛り上がり続け、インストをしっとり演奏している場合ではなさそう。本日はカンジャなし、というわけでボヘミア飲みつつさんざん踊りまくりました。
由香さんとジュニオール。 ついでに私も2ショット。酔っ払いです。 盛り上がるとメンバー全員立ち上がる。

2月22日(日)
今日は二度目のニテロイ。ホナウドがニテロイのライブハウスに出演するという。
夜にプラッサ・キンゼから船に乗る。昼間とくらべて乗客の少ない船室はちょっと恐いと思ったけど、船から見る夜景はきれいでした。船着き場を出てすぐ、出迎えにきたホジェーリオに名前を呼ばれ驚く。うーむ、なんて時間に正確な人なんだろう。負けました。前回同様UFOのような美術館を通り過ぎ、大学なども通り過ぎたけれど今度はずっと近い場所で町中にある居酒屋。
数年前に発売されたCD「オルキージア」のアルバムタイトルにもなったこのお店では、最近はホジェーリオが一緒にショーロを演奏する機会はないようで、この日はなんとジャズ。ホナウドってジャズも演奏するの?と驚く。編成はキーボード、ウッドベース、ドラム、そしてホナウドのバンドリン。
始まってみると、なんとも面白いライブ。何が面白いって、曲はショーロでやり方がジャズ、そしてグルーヴはブラジル!ショーロの曲をメンバー各自凄絶なテクニックでアドリブをとるけれど、リズムが崩れることはない。どんな曲をやってもやっぱりブラジル人のサウンド。参りました。
そしてカンジャとして今日も参加。さてどうしたものかと半分途方にくれつつも後半ずっと演奏。もうヤケクソでアドリブ頑張ってしまいました。最近ホナウドからよくリクエストされるモンティのチャルダッシュも演奏。
もう一人カンジャでアウフレッドという若者がサンバを歌う。人なつっこいアウフレッド。 彼とは最近よく顔を合わせる。クララ・ヌニェス劇場のホーダ・ヂ・ショーロではギターを弾き、昨日の『カリオカ・ダ・ジェンマ』ではサンバを歌っていた。彼はニテロイに住んでいるらしく、ホナウドの息子でやはりバンドリンを弾くチアーゴとも一緒にバンドをやっている。
休憩中、ホジェーリオが色々と解説してくれてここでもプチ・レッスン。まったく親切な人です。彼は最後までいられず私を送り届けるようにとアウフレッドとホナウドに告げ途中で帰宅。そしてアウフレッドもホナウドもニテロイに住んでいるというのにわざわざコパカバーナまで送ってくれたのです。どこかタクシーの拾える場所まで送ってもらえたら一人でも大丈夫だったのに、と言ったけれど「まぁいいじゃん」とお二人。恐縮です。
海上高速道路を渡り、右手に警察署の建物が見えたあたりで、左手の港に停泊中の豪華客船「クイーン・エリザベス号」を見る。日本でもお目にかかったことがなかったのにこんなところで出くわすとは。三人で船の豪華さ、長さに感心しながらコパカバーナへ。これから二人はまたニテロイへ戻るのだから、本当にお手間をかけました。


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